一人情シスに求められる Entra ID セキュリティ対策
中小企業や一人情シス環境では、限られたリソースで最大限のセキュリティを確保する必要があります。
Microsoft Entra ID(旧 Azure AD)は標準で多くのセキュリティ機能を備えており、追加投資を抑えつつ強化が可能です。ここでは実践しやすい 3 つのポイントを解説します。
多要素認証(MFA)の標準機能活用
パスワードのみの認証はリスクが高く、フィッシングや総当たり攻撃の標的になりやすいです。
💡 攻撃手法と影響
- フィッシング攻撃
偽のメールやログイン画面を使ってパスワードを入力させる手口。
被害者がだまされると、攻撃者は正規の認証情報を入手できる。
結果として、業務メールやクラウドサービスへ不正ログインされ、社内データや顧客情報が流出するリスクが高まる。 - 総当たり攻撃(ブルートフォースアタック)
自動化されたツールで大量のパスワード候補を次々に試す攻撃。
短い・単純なパスワードは短時間で突破される。
突破されると管理者権限の奪取や、メール・Teams・SharePoint などの業務システムへの侵入につながり、事業停止やなりすましメール送信などの被害が発生し得る。
Entra ID には無料で利用できる 多要素認証(MFA) が組み込まれており、スマホアプリ(Microsoft Authenticator)、SMS、電話による追加認証が可能です。
- 即導入可能な設定
- 管理者アカウントは必須で MFA を有効化
- 全ユーザーに対して「セキュリティ既定値」を有効にすることで、無償でも MFA を段階的に適用可能
💡ポイント
無償プランでも MFA を標準利用できますが、業務に合わせた柔軟な制御(例:特定条件下のみ MFA)を行うには Entra ID Premium P1 が必要になります。
👉 詳細: Microsoft Docs – 強制多要素認証
条件付きアクセスの基本ルール
条件付きアクセスは、ユーザーやデバイスの状況に応じてアクセスを制御する仕組みです。
小規模環境でも次の基本ルールを設定するだけでセキュリティ水準が大きく向上します。
- 基本ルール例
- 管理者は常に MFA 必須
- 不審な場所(海外 IP など)からのアクセスをブロック
- 個人端末からのアクセスはブラウザー経由のみに制限
- 利用条件
条件付きアクセスは Entra ID Premium P1 以上で利用可能です。
Microsoft 365 Business Premium などのプランに含まれるため、小規模企業でも導入しやすい点がメリットです。
👉 詳細: Microsoft Learn – 条件付きアクセスとは
小規模でも実践できるゼロトラストの一歩
「ゼロトラスト」と聞くと大規模企業向けに思われがちですが、小規模環境でも 一歩ずつ実践可能 です。重要なのは「すべてのアクセスを常に検証する」という考え方を取り入れることです。
- 最初に取り組むべきポイント
- パスワードレス認証(FIDO2キーや Windows Hello)を検討
- すべての SaaS へのアクセスを Entra ID に統合(シングルサインオン)
- Intune と組み合わせて「準拠デバイスのみアクセス可能」に設定
- 一人情シスの工夫
全面導入ではなく、まずは「管理者アカウントのゼロトラスト化」から始めるのが現実的です。
👉 詳細: Microsoft Learn – ゼロトラスト セキュリティ モデル
まとめ:まずは小さく始める
- 無償でも利用できる MFA を有効化
- Premium P1 を利用できるなら条件付きアクセスで基本ルールを設定
- 長期的にはゼロトラストの考え方を浸透させ、業務アプリや端末管理まで拡張
一人情シスにとって、すべてを一度に導入するのは現実的ではありません。「管理者 MFA → 条件付きアクセス → 段階的ゼロトラスト」 の順に進めることで、無理なくセキュリティ水準を高められます。
🔗 Active Directory を残すべきか?クラウド移行すべきか
🔗: Intune と MCM のハイブリッド管理
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