要点サマリ
同じ「AD→Entra 同期」でも、Cloud Syncは軽量エージェント方式、Connect Syncは専用サーバー方式です。
運用・可用性・移行容易性が大きく異なります。
公式: Cloud Sync とは, Connect Sync の概要.
アーキテクチャの違い
- Cloud Sync:ドメイン内にクラウドプロビジョニングエージェントを複数配置。
スケール・冗長化が容易。SCIMベースで動作。
参考: Cloud Sync の仕組み. - Connect Sync:Windows Server 上のConnectを1台以上で運用。
SQL/バックアップ/更新適用などサーバー運用の重みがある。
選択基準(SMB向け)
- 運用負荷:サーバー不要の Cloud Sync が有利
- 冗長化:Cloud Sync はエージェント追加で容易(多重化)。Connect は Staging モードなど設計が必要
- 機能差:一部機能は Connect が先行していたが、Cloud Sync は急速にキャッチアップ中
- 更新と将来性:Cloud Sync は短期サイクルで改善。Connect は将来的に Cloud Sync へ統合方向との示唆がある(機能パリティ後に移行が一般的)
運用Tips
- Cloud Sync は2分ごとに差分同期が走るため、パスワード変更の反映が速い。
参考: Cloud Sync FAQ. - 監査・可視化はサインイン/監査ログの診断設定で Log Analytics へ出力し、同期後の影響も追える。
失敗しやすいポイント
- ハイブリッド環境の二重同期
Connect と Cloud Sync を同時運用する期間は属性の競合に注意。
スコープ分割と計画的な切替が必須。 - 最初の構成を過信
OU/フィルターの見直しを後回しにして、不要オブジェクトが大量同期される。
初回は読み取り専用のシミュレーションで影響を把握。
具体的な移行ステップ(Connect → Cloud Sync)
- Cloud Sync エージェントを別OU/限定スコープで導入
- 同期プレビューで影響を確認(削除/更新件数)
- Connect 側の同一スコープを除外し、重複競合を防止
- 数週間の観測後、対象範囲を徐々に拡大
- Connect の退役はバックアップ取得→停止→アンインストールの順で安全に
機能比較の観点(文章で要点化)
- 多フォレスト/多ドメイン:両者対応。Cloud Sync は複数エージェントで拠点分散が容易
- パスワードハッシュ/書き戻し:要件によって事前検証。Cloud Sync は短間隔の差分が強み
- 管理性:Cloud Sync はポータルからエージェント状態を一元監視。Connect はサーバーOS/パッチ運用が必要
セキュリティの観点
- エージェントは最小権限のランタイムで動作。
監査は Log Analytics に集約し、変更検知を自動化
実導入のケーススタディ
- A社(100名):Connect から Cloud Sync へ 3 週間で移行。エージェント 2 台冗長化、運用時間を月8時間削減
- B社(600名/拠点分散):当面は Connect 併用。遠隔拠点は Cloud Sync、DC 集約の本社は Connect と併用設計
よくある質問
- Q: どちらもサポートが続く?
A: 公式情報では Cloud Sync が新機能の中心。Connect も当面継続だが、新規は Cloud Sync 優先が無難。 - Q: パスワード書き戻しは?
A: 要件によって挙動が異なるため、パイロットで確認し、利用者告知を徹底。
監視
- エージェント/同期の状態は管理センターでヘルスチェック。失敗率や再試行回数を週次レビューし、閾値を超えたら自動通知
属性フローとフィルター設計
- UPN/ProxyAddresses/phone など競合しやすい属性は事前に責任分界を定義
- フィルターは OU と属性の二重ガードで、誤同期のリスクを最小化
テスト観点のチェックリスト
- [ ] 初回同期前の削除予測が 0 であることを確認
- [ ] パスワード変更の反映時間を実測(Cloud Sync で 2〜4 分が目安)
- [ ] グループ/連絡先/無効ユーザーの扱いを定義
ガバナンスの進め方
- 同期範囲の変更は変更管理に乗せ、承認前に影響レポート(追加/削除/更新件数)を提示
- 本番反映は営業時間外に限定し、巻き戻し手順と連絡網を事前に確認
まとめ
Cloud Sync と Connect はどちらも優れた選択肢ですが、SMB での運用容易性と将来性を考えると Cloud Sync を第一候補に。段階移行とログ監視を徹底すれば、移行の不安は最小化できます。
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